監修者 竹村 直浩

・会計事務所での実務経験を起点にキャリアをスタートし、
 約30年間にわたりデータベースマーケティング/BPO業務/起業支援/新規事業立案に従事
・データベースマーケティング関連事業・新規事業支援会社では、
 創業者・代表取締役として30年間経営を牽引(現在は取締役として参画)
・新規事業コンサルティング会社の代表取締役として、経営管理・新規事業立案などの業務支援を提供
・介護・衛生管理、シニア向けIT、マーケティングDB構築など複数領域で取締役を歴任し、
 事業開発と組織運営の両面から企業成長を支援

両罰規定の活用で行政書士業務はどう変わる?2026年改正行政書士法のポイント

コラム

2026年1月から改正行政書士法が施行され、新たに「両罰規定」が導入されました。これは行政書士業務の適正化を目的とし、違反行為を行った個人だけでなく、雇用者や法人にも責任を問う制度です。行政書士や関連業界において、今後ますます重要となる法令遵守とコンプライアンス意識の向上について解説します。

両罰規定とは何か?行政書士が理解すべき基本事項

両罰規定の定義と目的

両罰規定とは、法律に違反した個人に対する処罰に加え、その行為に関与した法人や団体、雇用主にも罰則を科す制度です。行政書士法においてもこの仕組みが導入され、無資格者が行政手続きに関する書類を作成し報酬を得た場合、その個人だけでなく、所属する組織や法人代表者にも法的責任が課されることとなりました。

この制度の主な目的は、組織的な違法行為を未然に防止することにあります。実行者に責任を押しつけて組織が逃れるような構造を排除し、より厳格な業務管理が求められるようになります。

改正行政書士法での背景と導入の意義

この制度が導入された背景には、無資格者による書類作成の横行という深刻な問題が存在します。特に、「無料相談」や「コンサル料」という名目で実質的な書類作成を行っていた例が多く、行政書士法の趣旨から逸脱する事案が相次いでいました。

さらに、法人が組織的に非行政書士行為を容認することで、違法性を巧妙に隠すケースもありました。これにより行政書士制度の信頼が損なわれたことを受け、関係者全体に責任を問える制度として両罰規定の導入が決定されました。


行政書士業務における両罰規定の活用例

対象となる業務範囲とその線引き

今回の改正で、行政書士でない者が報酬を得て官公署に提出する書類を作成する行為が明確に違法と定義されました。該当する主な業務は以下のとおりです。

違法となる行為概要判断のポイント
補助金申請書の作成コンサル業者が無資格で実施報酬の有無にかかわらず違法
自動車登録・車庫証明納車時に書類作成代行名目が「サービス」でもNG
在留資格関連書類外国人支援機関が作成形式ではなく実質が問われる

名目ではなく実態で判断される」ことが重要なポイントです。無料であっても、集客目的の無資格作成は処罰対象となる場合があります。

違反時の処罰対象と罰則内容

対象行為例処罰内容
無資格従業員書類を直接作成100万円以下の罰金、業務禁止
法人代表違法行為を黙認法人に対しても罰金処分
行政書士法人名義貸し容認業務停止命令や登録取消もあり得る

法人のトップも「知らなかった」では通らないという点が、これまでとの大きな違いです。


業界別に見る両罰規定の影響と注意点

自動車販売業界の対応ポイント

新車・中古車販売業者では、車庫証明や登録手続をサービスの一環として提供することがあります。しかし、行政書士でない従業員が作成を代行した場合、両罰規定に基づく処罰対象となるリスクがあります。

リスク現状対策
無資格者が作成店舗がサービスとして対応行政書士と業務委託契約を結ぶ
販売と同時に書類提供一連の流れに含めてしまう書類作成と販売業務を明確に分離する

今後は、「販売店が書類を作成するのが当たり前」という認識を改める必要があります。

補助金コンサルティング会社のリスク管理

補助金コンサル企業では、事業計画書の作成代行や申請サポートがよく行われています。しかし、報酬が発生する場合、それが行政書士法違反となるリスクが非常に高くなっています。

行政書士との契約がないまま業務を行えば、法人代表者や従業員全体が処罰の対象となります。契約書や業務範囲の文書化、報酬の受け渡しルールの明示が重要です。

登録支援機関の注意点

外国人雇用に関連する支援機関でも、在留資格関連書類の作成代行が多く見られます。これらは、明確に行政書士の独占業務に該当するため、非行政書士による対応は違法です。

業務例注意点適法化のために必要なこと
在留資格更新書類の記入支援報酬の発生があれば違法行政書士との連携体制構築
入国管理局との交渉代行非行政書士には不可代行ではなく相談の範囲にとどめる

登録支援機関は、「何をしてよくて、何がダメか」の境界を明確に理解することが不可欠です。


行政書士法人への影響と内部統制の必要性

名義貸し問題への対応強化

行政書士法人で頻発するのが名義貸しの問題です。たとえ法人所属の行政書士が実際に関与していなくても、名義を使って他者が書類作成を行うことは違法です。

「報酬は法人が受け取るが、作成は外部の無資格者」という形も、今回の改正で明確に処罰対象となります。名義貸しは単なる規則違反ではなく、制度全体の信頼を揺るがす重大な違法行為であるという認識が必要です。

内部統制と再発防止策の構築

行政書士法人に求められるのは、「管理体制の強化」です。

管理項目内容目的
業務範囲の明確化誰がどの業務を行うかを明文化責任の所在を明確にする
研修の実施法令順守・倫理教育従業員の意識向上
外部監査制度第三者による定期的な確認不正の早期発見と抑止

「自分たちは大丈夫」という慢心こそが最大のリスクであることを、組織全体で共有することが重要です。


行政書士に求められる新時代の倫理と責任

信頼構築のための行動指針

行政書士は、単に書類を作成するだけでなく、法制度の専門家として社会的責任を果たす存在です。今後は、依頼者に対して正確かつ誠実な説明を行い、業務の透明性を高めることが信頼につながります。

「知らなかった」では済まされない今の時代において、知識のアップデートと行動規範の確立は必要不可欠です。

市民との信頼関係を築く対応力

一般市民や企業が行政書士を選ぶ際、今後は「法令を守っているか」「適切な業務をしているか」という視点が重視されます。高い倫理意識と説明責任を果たす姿勢が、行政書士への信頼の礎となります。


まとめ

今回の行政書士法改正と両罰規定の導入により、業務の透明性と責任の明確化が徹底的に求められるようになりました。行政書士自身はもちろん、関与する法人全体が社会的責任を持って行動することが必要です。

今後は、組織的な法令遵守体制の構築と、依頼者との信頼構築が成功の鍵となります。行政書士として、法の番人であるという誇りと自覚を胸に、社会からの期待に応えていくことが求められています。