監修者 竹村 直浩

・会計事務所での実務経験を起点にキャリアをスタートし、
 約30年間にわたりデータベースマーケティング/BPO業務/起業支援/新規事業立案に従事
・データベースマーケティング関連事業・新規事業支援会社では、
 創業者・代表取締役として30年間経営を牽引(現在は取締役として参画)
・新規事業コンサルティング会社の代表取締役として、経営管理・新規事業立案などの業務支援を提供
・介護・衛生管理、シニア向けIT、マーケティングDB構築など複数領域で取締役を歴任し、
 事業開発と組織運営の両面から企業成長を支援

改正行政書士法とは?2026年施行の改正ポイントと実務への影響を解説

関連ポスト

2026年1月1日、行政書士業務の基盤となる行政書士法が大きく改正されました。今回の法改正では、行政書士の使命と職責が法的に明文化されただけでなく、非行政書士による違法行為への規制、業務のデジタル対応、罰則強化など、実務に直結する重要な内容が盛り込まれています。

この記事では、法改正の全体像とその具体的な影響について、実務視点からわかりやすく解説します。


改正行政書士法の概要と背景

改正行政書士法(令和7年法律第65号)は、行政書士の社会的責任と役割を強化することを目的とした法整備です。背景には、行政手続きの高度化や、無資格者による不適切な業務が問題視されていた状況があります。

また、デジタル社会の進展により、書類の電子化やオンライン申請の重要性も増しており、それらに対応する法整備が必要とされていました。これらの要請を受け、法改正に踏み切ったのです。


主な改正ポイント一覧

改正項目内容対象
使命・職責の明記国民の権利利益の実現に貢献、公正・誠実な業務遂行義務を明文化全行政書士
非行政書士行為の禁止報酬の名目に関係なく、書類作成業務を無資格で行うことを禁止無資格者、依頼者全般
両罰規定の導入違反者個人だけでなく法人にも罰則(100万円以下の罰金)を科す規定追加行政書士法人、一般法人
デジタル対応の明文化電子的記録による書類作成が業務範囲に含まれることを明記全行政書士
特定行政書士の範囲拡大不服申立て代理の対象範囲が広がり、業務の高度化が可能に特定行政書士、依頼者全般

使命と職責の明文化

改正法では、行政書士法第1条が「使命」として再定義され、国民の権利利益に貢献することが明文化されました。さらに、「職責」として、公正・誠実な態度で業務を遂行すること、そして常に品位を保つことが明記されています。

この改正により、行政書士の倫理観や信頼性が法律上の義務として強化された形となり、業務に対する責任の重みが一段と増しています。


使命・職責と従来の違い

項目改正前の位置づけ改正後の明文化内容
目的業務内容や資格制度の定義が中心社会的使命と役割を法律上の柱として明記
職責法律には未記載(倫理規定にとどまる)品位保持、公正誠実な業務遂行の義務を条文化
社会的信頼性個々の判断に委ねられていた行政書士としての自覚と行動基準が法的義務となった

非行政書士行為の禁止とその具体例

改正法では、行政書士でない者が報酬を得て書類作成を行う行為を明確に禁止しました。名目が「コンサル料」「サポート代」などであっても、実態が書類作成業務であれば違法です。

以下のようなケースが具体的な対象となります。

非行政書士行為の禁止対象例(表)

行為内容違法となる可能性の有無解説
補助金申請代行を無資格で実施違法報酬の有無にかかわらず禁止対象
在留資格申請サポート(外国人対応)違法名目が相談料であっても、実質的な書類作成であれば違法
許可・認可取得の申請書作成代行違法一般法人による無資格代行も両罰規定の対象に

この改正により、依頼者側も、行政書士資格の有無を確認しないまま依頼することがリスクとなります。依頼時の確認体制が今後ますます重要になります。


両罰規定の導入と法人責任の明確化

今回新たに導入された両罰規定では、個人だけでなく法人も罰則対象となることが特徴です。違法な業務を行った行政書士が法人に所属している場合、その法人にも最大100万円の罰金が科される可能性があります。

この規定により、法人はより厳密な業務管理体制を構築しなければなりません。法令遵守が徹底されていない企業や事務所にとっては、経営リスクが増すことになります。


法人として求められる対応

対応項目具体的内容
法令遵守マニュアルの整備無資格者に業務を委託しない、業務範囲を社内で共有する
定期的な研修実施改正内容、過去事例、実務上のグレーゾーンについて社員へ教育
業務フローの可視化書類作成のプロセスを記録に残し、不正の疑いを事前に排除する体制構築

デジタル社会への対応と努力義務

行政書士の業務はこれまで紙を前提とするものが多くありましたが、法改正により、電磁的記録による書類作成が明確に認められたことは大きな変化です。

さらに、デジタル技術の活用は「努力義務」として行政書士に課されました。オンライン申請、電子署名、クラウドストレージの利用など、業務の幅が大きく広がります。


デジタル化で想定される新業務

業務領域具体例
オンライン行政申請建設業許可、法人設立手続、補助金申請など
電子帳簿の管理支援電子取引の帳簿保存対応、クラウド保存の指導など
リモート相談・Web会議対応地方在住の依頼者との契約支援、業務効率の向上

デジタル化は、効率化を図るだけでなく、顧客との接点拡大や地域格差の是正にもつながる重要な取り組みといえるでしょう。


特定行政書士の業務範囲拡大

特定行政書士とは、所定の研修を修了し、試験に合格した者に与えられる資格です。今回の法改正では、不服申立ての代理がより広範囲に可能となり、準司法的な役割を担う場面が増えました。

たとえば、行政機関による許可取り消しや、罰則処分に対して、適切な主張を行政書士が代理で行えるようになったのです。


まとめ

2026年の改正行政書士法は、業界にとって制度改革と業務変革の両面を含む大きな転換点です。使命・職責の明文化、無資格者排除、罰則強化、デジタル化対応、特定行政書士制度の拡充といった改正は、いずれも行政書士の専門性と信頼性を高める方向に作用しています。

行政書士にとっては、今後ますます知識・スキル・倫理観の3軸が求められる時代に突入したと言えるでしょう。一方、依頼者や法人側も、正しく依頼する責任を持つ必要があります。

法律の改正は制度の更新であると同時に、社会との関わり方を見直すきっかけにもなります。行政書士業界とその利用者がともに成熟するための第一歩として、今回の改正を機に、実務レベルの意識改革を進めることが期待されています。