監修者 平岡 拓也

医療業界に特化した社会保険労務士。
大学卒業後、調剤薬局にて事務・登録販売者として勤務し、その後本社人事労務を担当。現場と本部の双方を経験し、医療業界特有の労務課題やメンタルヘルス問題に精通している。

風通しの悪い職場環境を経験したことをきっかけに、働きやすい職場づくりを支援するため社会保険労務士として独立。従業員のモチベーション向上やメンタルヘルス対策を重視した人事労務支援を強みとする。

FP2級資格を保有し、企業型DC(確定拠出年金)の導入支援にも対応。福利厚生制度の整備を通じて、従業員の将来の安心と企業の持続的成長をサポートしている。

労働基準法の抜本改正案とは?2026年度は見送りの背景と今後の動向を解説

コラム

約40年ぶりとなる労働基準法の抜本改正が注目されていますが、2026年の通常国会への改正案提出は見送られる見通しです。本記事では、検討中の主な改正項目と確定している関連法改正についてわかりやすく解説し、今後の労働環境の変化を展望します。

労働基準法の抜本改正とは何か

2026年度改正の背景にある問題意識

現在の労働基準法は1980年代から大きな改正が行われていません。その間に社会や働き方は大きく変化し、テレワークや副業、フリーランスの普及など、制度とのズレが広がっています。

長時間労働や健康被害、ハラスメントの問題も社会問題化し、これまでの法体系では対応しきれない場面が増えています。こうした背景から、「働く人の保護」と「企業の競争力維持」を両立させる新しい制度が求められています。

2026年度の国会提出は見送りの方向へ

当初、2026年通常国会に提出される予定だった改正案は、見送られる見通しとなりました。その背景には、以下のような調整の難航があります。

主な対立軸労働者側の意見企業側の意見
働き方の柔軟性健康確保、残業制限を重視効率性と運用の自由を重視
副業の扱い副業時間の通算や割増賃金の明確化を要求管理責任や計算負担が大きすぎると反発
休日管理法定休日の特定を義務付ける案に賛成多様な働き方に逆行するとして反対

このように、根本的な制度変更には両者の深い調整が必要であるため、法案提出は先送りとなりました。

主な改正案の内容と検討状況

議論の中心となっている6つの改正項目

厚生労働省による検討会では、以下の改正案が議題となっています。

改正項目内容
14日以上の連続勤務禁止過労や健康被害を防ぐ目的。
勤務間インターバルの義務化11時間などの最低休息時間を確保する案。
法定休日の特定義務化曖昧だった休日ルールを就業規則に明記する。
有給休暇の賃金算定方法統一通常賃金での一本化により透明性を高める。
副業・兼業の労働時間通算の見直し計算方法を簡素化し、企業負担を軽減。
つながらない権利の明文化勤務時間外の連絡を拒否できるルールの整備。

これらの内容はすぐに実施されるわけではありませんが、今後数年にわたる重要な法整備の指針となるでしょう。

2026年度に施行が確定・予定されている関連法改正

労働基準法以外の改正スケジュール

以下の法制度は、2026年に確定的に施行される予定です。

法律改正内容施行時期
年金制度改正法在職老齢年金の支給停止基準額の引き上げ。2026年4月
国家公務員の兼業緩和特技を活かした副業の容認。2026年4月
障害者雇用促進法改正法定雇用率を引き上げる。2026年7月
中小受託取引適正化法フリーランスとの取引の透明性向上。2026年1月

これらは労働基準法の抜本改正とは別に、実務レベルでの労働環境に直接影響する法改正です。

なぜ抜本改正の提出が見送られたのか

調整の難しさと実務上の懸念

制度改正は理想を描くだけでは実現できません。とくに中小企業では、人手不足やコスト面での制約が大きく、義務化による負担増への懸念が強くあります。

改正項目現場からの懸念
勤務間インターバル制度シフト制や24時間稼働の業種では運用が困難
休日の事前明示突発的な業務対応に支障をきたす恐れ
つながらない権利業務連絡の即時対応が求められる現場との乖離

このような意見が広がる中、法制化にはさらなる検証と議論が求められているのです。

企業と働く人が今できる準備とは

改正を見据えた行動が企業の競争力を高める

法改正が遅れているからといって、何もしないのは得策ではありません。時代の変化に対応できる企業こそが、優秀な人材の確保と生産性向上を実現できます。

対応施策効果
勤務間インターバル導入労働者の健康管理・離職防止につながる
明確な休暇取得ルール有給休暇の取得率向上と不満の抑制
副業ガイドラインの整備労働時間・情報管理の明確化でリスク回避
業務連絡の運用ルール設定つながらない権利の先行対応が信頼を高める

働く人自身も、変化に対応できるスキルや知識を持つことが今後のキャリア形成に欠かせません。

まとめ

柔軟に変化に備えることが働き方改革の本質

2026年度の労働基準法改正案は提出が見送られたものの、その中身は今後の日本の働き方を占ううえで非常に重要です。企業と労働者がともに課題を理解し、変化を先取りする姿勢が求められます。特に中小企業にとっては、コストを抑えつつ柔軟な対応を進める工夫が今後の経営戦略の鍵となります。また、働く個人としても、自らの働き方を見直し、健康と成果を両立させるバランス感覚が重要です。

変化は突然に起きるものではなく、徐々に訪れます。社会全体が移行期にある今こそ、備える力が問われているのです。