監修者 平岡 拓也

医療業界に特化した社会保険労務士。
大学卒業後、調剤薬局にて事務・登録販売者として勤務し、その後本社人事労務を担当。現場と本部の双方を経験し、医療業界特有の労務課題やメンタルヘルス問題に精通している。

風通しの悪い職場環境を経験したことをきっかけに、働きやすい職場づくりを支援するため社会保険労務士として独立。従業員のモチベーション向上やメンタルヘルス対策を重視した人事労務支援を強みとする。

FP2級資格を保有し、企業型DC(確定拠出年金)の導入支援にも対応。福利厚生制度の整備を通じて、従業員の将来の安心と企業の持続的成長をサポートしている。

介護情報基盤とは?2026年度から始まる新制度の内容と現場への影響を解説

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2026年度から全国的に導入が始まる「介護情報基盤」。介護と医療がより密に連携し、情報をリアルタイムで共有できる仕組みが整備されます。これにより現場の負担が軽減されるだけでなく、利用者や家族にとっても大きなメリットが生まれます。

本記事では、制度の概要からメリット、準備のポイントまでわかりやすく解説します。


介護情報基盤とは

デジタルで情報連携を進める新しい社会インフラ

介護情報基盤とは、自治体・医療機関・介護事業所が利用者の情報を共有し合うための共通プラットフォームです。2026年4月から、準備が整った地域・事業所より順次導入が始まります。

これまでは、情報共有に紙の書類や電話、FAXなどを使っていたため、手間や時間のロスが課題でした。しかし今後は、本人同意のもとで重要な情報をデジタルで一元管理できるようになります。

共有される主な情報は以下のとおりです。

共有される情報内容の例
介護保険被保険者証の情報保険者番号、交付日、有効期限など
ケアプラン情報利用サービス、頻度、事業所名、担当者名など
要介護認定情報主治医意見書、認定調査票の内容
LIFE(科学的介護)データの一部生活機能、栄養、口腔、リハビリなどの記録

これらの情報をリアルタイムで確認できることで、連携の遅れや情報の食い違いが防げるようになります。


介護情報基盤の導入目的とメリット

現場の負担軽減と利用者の利便性向上を両立

介護情報基盤の目的は大きく分けて3つあります。

  1. 医療と介護のスムーズな連携
  2. アナログ事務の削減と効率化
  3. 本人・家族の利便性向上

情報のやり取りが即時で可能になることで、たとえば入院中の利用者が退院する際、病院とケアマネジャーとの間でのケア情報の受け渡しがスムーズになります。

関係者導入による主なメリット
利用者・家族書類の持ち歩きが不要になり、手続きの手間が減る
ケアマネジャー情報収集が簡略化し、プラン作成にかかる時間が短縮される
医師・看護師ケアプランや介護履歴が即時に確認でき、迅速な退院支援が可能
自治体職員認定事務や問い合わせ対応の効率化が期待される

さらに、マイナンバーカードによる本人確認が可能となるため、利用者が自分の情報を簡単に確認できる仕組みも整備されます。


現場に起こる具体的な変化

情報基盤がもたらす運用面での影響と対応

情報基盤が導入されると、現場での業務に以下のような変化が生まれます。

業務内容導入前の課題導入後の改善点
ケアプラン作成事業所・病院からの情報収集に時間がかかるシステム上で必要情報を即時取得可能
認定調査の準備書類不備や二重入力の発生電子的に統一された情報を活用できる
退院支援・調整情報の行き違いで調整に時間がかかる医療と介護で同じ情報を参照しながら調整できる
家族への説明や共有情報が紙でしか渡されず、遠方の家族に伝えづらいデジタル情報により共有しやすくなる

このように、情報基盤の導入は現場の業務の質そのものを変える可能性を秘めています。


導入準備と補助制度のポイント

設備・人材・制度の3本柱で準備を整える

介護情報基盤の導入には、システム整備・職員教育・情報管理体制の構築が必要です。国はそれに対して、補助金・助成金による支援を用意しています

準備項目具体的な取り組み例
ICT環境の整備パソコン・ルーターの更新、セキュリティ設定
スタッフの教育システム操作、個人情報保護、電子認証の基礎知識
フロー・体制の見直し情報の更新ルールの策定、管理責任者の配置
補助制度の活用自治体の補助要件を確認し、申請書類を早めに準備

補助対象は都道府県や事業所規模によって異なるため、早期に自治体と連携し、情報収集することが重要です。


成功の鍵は段階的な導入とスタッフの理解

スムーズな移行に向けた実践的アプローチ

導入を成功させるためには、段階的な導入計画とスタッフの意識改革が欠かせません。

段階取り組むべき内容
初期準備導入スケジュールの把握、システム事業者の選定
中間点検操作研修の実施、テスト運用、利用者家族への周知
本格運用前役割分担の明確化、トラブル対応マニュアルの整備
運用開始後利用状況の分析、改善点の共有、定期的な研修の実施

「現場が変わる」ことへの抵抗感を最小限に抑えるためにも、職員同士の共有や支え合いが鍵となります。


まとめ

情報基盤の整備は、利用者本位の介護を支える土台に

介護情報基盤は、業務の電子化という枠を超えて、高齢者一人ひとりの生活を守る「見える支援」の実現に寄与する社会インフラです。医療・介護の枠を超えて情報を共有することで、利用者にとって最適なケアを、最適なタイミングで提供できるようになります。

また、現場職員にとっても情報の可視化と効率化は、本来の業務である「人と向き合う介護」に集中できる環境づくりにつながります。

制度の理解と準備が進むほど、導入後の混乱は小さく、効果は大きくなります。すべての関係者が制度の趣旨を理解し、現場で実践できる体制を整えることが、成功への第一歩といえるでしょう。