監修者 平岡 拓也

医療業界に特化した社会保険労務士。
大学卒業後、調剤薬局にて事務・登録販売者として勤務し、その後本社人事労務を担当。現場と本部の双方を経験し、医療業界特有の労務課題やメンタルヘルス問題に精通している。

風通しの悪い職場環境を経験したことをきっかけに、働きやすい職場づくりを支援するため社会保険労務士として独立。従業員のモチベーション向上やメンタルヘルス対策を重視した人事労務支援を強みとする。

FP2級資格を保有し、企業型DC(確定拠出年金)の導入支援にも対応。福利厚生制度の整備を通じて、従業員の将来の安心と企業の持続的成長をサポートしている。

育児・介護休業法改正で何が変わる?2026年に企業が対応すべき実務ポイント

コラム

2026年は「育児・介護休業法」そのものに新たな施行はありませんが、2025年に段階的に実施された法改正を受けて、企業の実務対応が本格化する年です。特に育児休業の取得状況の公表義務や、柔軟な働き方制度の導入・運用、介護離職を防ぐための個別対応などが注目されており、これまで以上に現場レベルでの対応力が求められます。

この記事では、企業が見落としがちなポイントを表形式も活用してわかりやすく解説いたします。


2026年は「制度運用」が焦点となる年です

2026年には新たな法改正の施行は予定されていませんが、2025年の改正内容が本格的に適用され、企業の実務対応に差が出る年となります。単なる制度導入だけでなく、「従業員に制度が伝わっているか」「実際に活用されているか」「形骸化していないか」などが問われるようになります。

制度運用に関しては、次の3つの観点が特に重要です。

観点内容
制度の理解促進従業員が制度を知っているかどうかの確認
利用しやすい設計書面や口頭での分かりやすい案内の徹底
実績の可視化制度の利用状況を数値や声で把握・共有

これらを意識することで、企業内に制度が根づき、従業員の信頼獲得や職場定着率の向上にもつながります。


育児休業取得状況の公表義務への対応

2025年4月より、育児休業取得率の公表義務の対象企業が拡大されました。これまで1,000人超の企業のみだった対象が、300人超の企業にも広がり、多くの中堅企業にとっても対応が必要となりました。

2026年には2025年度の実績を初めて公表することになります。企業は正確な数値を把握するだけでなく、従業員に見える形での公表が求められます。

公表対象従業員が300人を超える企業
公表内容男性・女性の育児休業取得率などの数値
公表時期2026年度の開始後、おおむね3か月以内
公表場所自社ホームページや両立支援のひろば等

また、取得率が低い場合の改善策を同時に検討する必要があります。以下のような点を見直すことで、制度利用を促進することができます。

改善視点実施内容
取得しやすい風土上司の理解促進、業務引き継ぎ体制の整備
数値の目標設定部署ごとの育休取得目標を策定
ロールモデルの紹介取得経験者の声を社内で紹介

こうした対応により、形式的な公表で終わらせず、実効性のある育児支援へとつなげていくことが可能になります。


柔軟な働き方の選定と運用点検

2025年10月からは、3歳から小学校就学前の子を育てる従業員に対し、2つ以上の柔軟な働き方制度を導入することが義務となりました。これには、テレワークや時差出勤、短時間勤務などが該当します。

2026年は、制度の導入状況だけでなく、実際に制度が活用されているかを点検し、運用の質を高めるフェーズに入ります。

点検項目内容
制度の種類2種類以上が制度として明文化されているか
利用率対象者が制度を使っている割合
職場の理解度同僚や管理職のサポート体制があるか

ここで大切なのは、単に制度が「ある」だけではなく、それが実際に「使える」「使われる」ものになっているかという点です。以下のような具体策も有効です。

運用強化策内容
人事主導の周知社内イントラや面談で制度を具体的に案内
利用事例の共有制度を活用した社員のインタビュー記事掲載
マネジメント支援上司向けの研修で理解を深める

これらの取り組みにより、働き方改革の真の実現に近づくことができます。


介護離職防止のための個別対応の定着

同じく2025年10月に改正されたのが、介護に直面した従業員への個別の周知と意向確認の義務化です。今後、高齢化に伴い介護を担う社員がさらに増えると予想される中で、適切な初動対応が離職防止に直結します。

対応内容実施例
個別面談状況確認と希望の聞き取り
制度案内介護休業・短時間勤務・相談窓口の案内
記録管理面談記録・フォローアップ履歴の整備

制度を機械的に案内するだけではなく、従業員の不安や疑問にしっかりと耳を傾けることで、信頼関係の構築と制度利用の促進につながります。

また、介護支援制度について、次のような社内整備が求められます。

整備項目内容
情報冊子の配布介護支援制度の概要をまとめた資料
相談窓口の設置人事部や外部専門機関と連携した相談体制
柔軟な勤務調整時間単位の有休、テレワークとの併用など

このように、制度の整備とともに、運用する人材の対応力強化が不可欠です。


2026年に関連するその他の労働制度の動向

育児・介護休業法以外にも、2026年は企業が注目すべき法改正がいくつか予定されています。特に、働き方や取引環境に直結する次の2つの法改正が重要です。

改正法主な改正内容
中小受託取引適正化法(フリーランス保護法)報酬支払期限の明示、契約内容の書面交付など
労働基準法(検討中)勤務間インターバル制度、連続勤務制限、「つながらない権利」の明文化

これらは働き手を取り巻く環境をより安全で柔軟なものへと変えるための改正であり、企業にとっては制度だけでなく労務管理の意識変革が求められるポイントでもあります。


まとめ

2026年は、育児・介護制度に関して「制度を整備する段階」から「制度を実際に機能させる段階」へと進む重要な節目の年です。制度があるだけではなく、それが活用され、結果として従業員の働きやすさや定着率の向上につながっているかが企業の評価につながります。

また、育児や介護は従業員一人ひとりの生活に密接に関わる問題であるため、企業の姿勢や対応次第で信頼やロイヤルティに大きな差が出る分野です。現場の声を反映しながら制度を改善し、働き続けられる環境を整備することが、これからの企業成長に欠かせない要素となるでしょう。