監修者 平岡 拓也

医療業界に特化した社会保険労務士。
大学卒業後、調剤薬局にて事務・登録販売者として勤務し、その後本社人事労務を担当。現場と本部の双方を経験し、医療業界特有の労務課題やメンタルヘルス問題に精通している。

風通しの悪い職場環境を経験したことをきっかけに、働きやすい職場づくりを支援するため社会保険労務士として独立。従業員のモチベーション向上やメンタルヘルス対策を重視した人事労務支援を強みとする。

FP2級資格を保有し、企業型DC(確定拠出年金)の導入支援にも対応。福利厚生制度の整備を通じて、従業員の将来の安心と企業の持続的成長をサポートしている。

在職老齢年金の見直しとは?2026年4月からの変更点と高齢者の働き方への影響

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2026年4月から在職老齢年金制度が大きく変わります。働く高齢者が年金を受け取りやすくなるよう、支給停止の基準額が51万円から65万円に引き上げられるのです。本記事では、この制度改正の背景や目的、具体的な影響について詳しく解説し、老後の働き方にどのような変化がもたらされるのかをわかりやすく紹介します。

働きながら年金を受け取る仕組みとは

在職老齢年金とは、60歳以上で厚生年金に加入しながら働く人に適用される制度です。給与などの収入と年金を両立して得る場合に、一定額を超えると年金の支給が調整される仕組みになっています。

制度の計算方法は以下の通りです。

項目内容
基本月額年金の月額
総報酬月額相当額月給+賞与の12分の1
支給停止基準額(現行)51万円
支給停止額の算出方法「基本月額+総報酬月額」が基準額を超えた分の半分を年金から停止

この仕組みにより、「働きすぎると年金が減る」という意識が働き、就労を控える高齢者も多いのが現状でした。


2026年4月から変わる在職老齢年金制度

2026年4月の見直しでは、支給停止の基準額が65万円に引き上げられることが決まっています。この改正により、働きながら年金を受け取る人の負担が軽減されると期待されています。

期間支給停止基準額(月額)改正ポイント
2025年度51万円現行制度
2026年4月以降65万円14万円の引き上げで支給停止を緩和

改正により、これまで年金がカットされていた収入層でも、年金を受給しやすくなることが見込まれます。


なぜ今、見直しが行われるのか

今回の制度変更の背景には、高齢者の働き控えを防ぐことと、深刻化する労働力不足の解消があります。

背景と目的内容
高齢者の就労支援働いたら損」という心理的な障壁の解消
労働人口減少への対策定年後も働く人材の活用で人手不足に対応
社会保障制度の安定化年金財源の安定と公平性の確保

これらの背景から、制度を柔軟に改め、働きやすさと受給のしやすさを両立する方向に舵が切られたのです。


改正でどう変わる?具体的な受給額の違い

制度変更による影響を分かりやすくするために、モデルケースでの比較表を作成しました。

月給年間賞与総報酬月額相当額基本月額合計額支給停止(現行)支給停止(改正後)
40万円60万円45万円20万円65万円約7万円0円
50万円80万円約56万円15万円約71万円約10万円約3万円

この表からも分かるように、改正後は支給停止額が大幅に減少するため、実質的な手取りが増加します。


制度変更による対象者の広がり

今回の見直しで対象となるのは、厚生年金に加入している60歳以上の就労者です。具体的には、定年後に再雇用されたり、パート・アルバイトで働く人々が含まれます。

年齢区分対象範囲
60歳〜64歳在職老齢年金の調整対象
65歳〜69歳高年齢雇用継続給付と併用が多い
70歳以上厚生年金未加入であれば支給停止対象外

特に60代前半の働く人々にとっては、今回の見直しは家計に大きな影響をもたらします。


企業と従業員が準備すべきこと

制度の変更は、企業と働く本人の両方に対応が求められます。以下のように、それぞれの立場に応じた備えが重要です。

対象取るべき対応
企業就業規則や給与体系の見直し、再雇用制度の再設計
従業員自身の収入と年金のバランス確認、将来設計の再構築
社労士等顧客企業・個人への情報提供と個別相談対応の強化

事前にシミュレーションや相談を行うことで、改正による不安を最小限に抑えることが可能です。


高齢者の働き方に与える長期的な影響

制度が改正された後、高齢者の就業形態やライフプランにも変化が見られるでしょう。以下は予想される影響の一覧です。

分野期待される効果
就労継続年金を減らさずに働けることで就労意欲が向上
生涯現役化長寿社会に合わせた柔軟なライフスタイルの実現
社会参加高齢者の社会的つながりの強化
家計の安定年金+賃金による安定した生活基盤の構築

今後は、高齢者が長く安心して働ける社会の整備が不可欠となります。


まとめ

2026年4月からの在職老齢年金制度の見直しは、高齢者の就労支援と年金の柔軟な受給の両立を実現するための重要な一歩です。これまで「働くと年金が減るから損だ」と感じていた人々も、改正後は収入を得ながらも年金を安心して受け取れるようになります。これは、人生100年時代を見据えた新しい生き方への移行ともいえるでしょう。

企業・従業員ともに制度を正しく理解し、自分らしい働き方や老後の設計に役立てていくことが求められます。